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湘南乃塵



湘南に行きたいと初めに言い出したのは誰だったか、僕らにはそれすらわからなかった。

オフ会前日の二一時ごろに場所変更のメールがきた。どうやら湘南は人の数がもの凄いことになっているようで、急きょ隣の逗子海岸で集まることになったらしい。

そして当日、集合場所の改札に集まってみるとチンピラのような男と眼鏡の男が二人、計三名が突っ立っていた。

IMG_3658.jpg
「では行こうか」とチンピラが言った。
不穏な空気のまま僕らは潮の匂いがする方向へと歩いていった。

歩くこと数分、ここは湘南だと思った。コロンブスがアメリカをインドだと言い張ったように、僕らからすればこの海岸も湘南に違いなかった。
砂に、欲に、そして人に塗れていた。
何よりその人種がまるで僕らとは違うのだ。まずドス黒い。そして半裸である。先進国日本の服装とは到底思えない格好で無数の黒人たちが徘徊している様子を僕らはただ指をくわえて見るほかならなかった。

ドンキで買ったビニールシートを広げるスペースを確保するのにも数分の時を要した。
その後で集まったメンバーのうち二名が水着に着替えにいき、水着すら持ってこなかった一人はビニールシートの上で英単語帳を開いていた。それは言い表せない異様な光景だった。
「場違いを通り越してキチガイだよなあ」と英単語帳が笑っていた。

酷く色褪せた海に泳ぎに行った二人を見送っていると、さらに別の二人がやってきた。長袖を着たまたしても場違いな男と、性格の悪そうな女子大生だった。
参加者が五人全員揃ったところである決断が下された。
「はやくインターネットに帰ろう」

チンピラは猛反対した。
「俺は湘南でイケイケになるんすよ!見ててくださいよ!」

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彼は歌いだした。それにつられて参加者の一人も踊りだした。
僕は困惑した。

はじめは異様な光景に押し黙っていたギャラリーたちも、一人一人と身体が動き始めていた。
一人は彼女と、一人は彼氏と、そして家族と、犬と、愛すべき人と。誰しもが手を取り合って踊りはじめた。
湘南を飲み込む熱気は大喝采とともに神奈川県全体に拡散し、生きとし生けるもの全てに活力を与えた。

IMG_3655.jpg
僕らはおいしいパスタにマジギレしながら、終わりのない夏を、湘南を、そして全てを謳歌した。

ハッと目が覚めてあたりを見渡すと、僕らは帰路に向かう途中の電車に乗っていた。
横で眠っている参加者を起こして経過を聞いても、今日起こったことを覚えている人は僕以外に誰もいなかった。

「それもありじゃないかな」
砂浜に捨てられた英単語帳が笑っていた。


湘南乃塵 完

2010/08/13 00:00 | 企画COMMENT(0)














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